-

ラックス・リサーチ・ジャパン > ライブラリトップ > 記事

2008/05/07


米国: 米国ワイン産業(1)

redOrbit

少し前に、私はいわゆる「ライフスタイル」業界で、いつか働こうと決心した。私にとって、それは、食品、ワイン、芸術、デザインなど、自分の生活の質を向上させる製品を作り出すビジネスであり、本質的な喜びがそこにはある。世界銀行で世界を救う活動をし、ロンドンの投資銀行で新興市場への投資業務を行う間、私はその決心をした。ヨーロッパ復興開発銀行(European for Reconstruction and Development)で私のもとで働いていた若手のハーバードMBAホルダーが言った。「金融は『何も生み出さない』。」彼女の意見には一理あった。なにはともあれ、4年前、ワイン業界では一流のアドバイザリー・コンサルティングサービス会社である、MKF Researchという会社を経営し、ワイン業界に参入した。そして、現在は、Stonebridge Research Groupのプレジデント&CEOとなり、リサーチ・アドバイザリーサービスから、次のステップのオペレーションと効率改善サービスへと事業を展開しているが、それはまた後半で説明する。

ワイン業界の数値指標

それでは、米国ワイン産業の基本数値指標からはじめよう。

*The Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau of the United States Department of the Treasury(旧ATF、現TTB)には、2006年末、米国の5,400のワイナリーが登録されており、これは1999年の倍の数である。現在、50の各州には最低1つのワイナリーがある。

*2005年の米国産ワインの生産額は238億ドルであり、米国内でのワイン総売上高の73%を占めている。

*米国産ワインの90%は、カリフォルニアで作られている。また、カリフォルニア産のワインは、米国産ワイン総売上高の95%を占めている。

*2006年の全産地ワインの米国内総売上高は、3億500万ケースと見積もられている。

*米国の大部分のワイナリーの年間生産量は5,000ケース以下である。また、それらワイナリーが占める割合は米国全ワイン生産量の2%以下であるが、それら製品の大部分は、1本30ドル以上のワインである。

米国は1人あたりのワイン消費量が第38位に位置しているが(第1位はイギリス)、国内のワイン消費量は年々増加している。よく使われるデータによれば、近年の年間平均成長率は、4−9%である(※1)。ちなみに、従来のワイン消費地域では、成長率は低下傾向にある。

したがって、単純に近年の成長率と人口を考えれば、米国は、数年のうちに世界最大のワイン市場になることが予測される。米国は実際、ワインを輸入している唯一の主要ワイン生産国であり、余分なワインの湖に浮かんでいる国のように思われる(※2)。

米国では23,000以上の農家が900,000エーカー以上の土地で、総価格350億ドルのブドウを栽培しており、それらほとんどはワイン用ブドウである。ブドウは米国では最も価値のある作物であり、全ての作物の中で第6位の価格である。それでも、2005年米国のブドウとブドウ製品リサーチに対する総予算は4500億ドルであり、そのほとんどは、連邦政府と民間企業からの提供であった。

ワイン協会(The Wine Institute)は、北米は価格$5/ボトル以上のワインの需要が増加している唯一の主要市場であると見ている。消費者は従来、10ドル以下のボトルワインを夜食用に購入していたが、現在、その上限は15ドルになっているようである。

アメリカ人はワインを、特別な時間を象徴する「お手ごろな贅沢」商品とみる傾向があるが、従来のワイン消費国家にとってワインは、それほど特別ではない主要・日常製品である(例外は、ボルドー一級品と、同様の受賞ワインである)。「新富裕層」の出現と一致して(※3)、ワインは上質な生活の象徴となった。

100万人以上の労働者が米国ワイン・ブドウで生計を立てており、サプライヤー(ボトル・タンク、ラベル、樽メーカー、配給業者、小売業者など)を含めれば、330億ドルの給与の源となっている。この業界への直接雇用は、2001年以来、3倍近くになっている。

世界のワイン業界は、まだ、主に中小企業や家族経営企業などから構成されている。この産業は、特別な楽しみと報酬も得られるが、今後の変化が見込まれる産業である。

ワイン産業の報酬と挑戦

まず最初に、報酬に対する幻想は忘れよう。この業界には「ライフスタイル」を意識して、非常に多くの人達が入ってくる。我々はこの業界での最初の週の仕事終わりを祝い、新たにオープンしたあるワイナリーで新ワインをテスティングして過ごした。長い金曜の午後4時、我々は数本のクライアントのワインの封切はしていたが、一本も飲みきってはおらず、全員その後仕事に戻った。もし、St Helena近郊の食堂Cindy's Backstreet Kitchenを調べてみれば、ランチにワインを飲んでいるのは業界人などではなく、旅行者であることがわかる。

この業界の誰もが一度は、有能な新人に悩まされる。彼らは、タンニンやマロラクティック発酵について薀蓄を説明しながら、一日中、ワイン・テイスティングをしたり、ランチやディナーの場でブドウ園やセレブの名前を挙げて自慢できることを期待して、業界入りしてくる。しかし、実態は、既に引退しワインへの情熱を第2のキャリアに傾けている権力者が言っている。「これは私が愛した仕事のうち、最もハードなものだ。」

何が大変なのか?

ワイン作りは農業だ。生きるも死ぬも、か弱い作物の天候、土壌、気温次第だ。午前3時に収穫を迎えているか(ほとんどのブドウの収穫時間は涼しい時だ)、早霜や遅雨で作物が台無しになってしまっているかわからない。

また、莫大なお金がかかる。ブドウ園にブドウを植えるには、ナパパレー(Napa Valley)で20万ドル/エーカー以上、イースト・コースト(East Coast)で1万ドル/エーカー、その他でも1万ドル/エーカーかから3万ドル/エーカーかかる。そして、収穫までに数年かかる。もし十分な灌漑施設や、区画許可やライセンス、担保金を用意すれば、ブドウ園を作るのには、最低1,000万ドルかかる。さらに、ワインを売ることを考えれば、3ヶ月(ソーヴィニョン・ブラン:Sauvignon Blanc)から3年間(Cabernet Sauvignons:カベルネ・ソーヴィニョン)はキャッシュフローは期待できない。

(※1)ワイン業界のデータ精度は一般的にあまり高くないが、$8/ボトル以下のワインの売上は、横ばいか、低下している(販売量では60%減、売上額では30%減)ことがわかっている。成長率は価格帯が上がるとともに増加する傾向にあり、$15/ボトル以上の価格帯のワインの売上が最も成長している。$8−$15の価格帯は全体の販売量の15%を占めており、売上高では30%を占めている。1人あたりの消費量は市場の成熟度と同様に、ゆっくりと伸びている。入手可能なデータでは、2001年から2006年の間に、世帯あたりの成人ワイン平均消費量は、年間86ドルから101ドルに増加している。

(※2)ここでは、ワインのコスト・価格構造には触れないが、ワインはよく均一商品として扱われている。そのため、「ワイン」が余ることは、そのまま、価格の低下につながると解釈される。しかし、ワインはよく「グラスの中のブドウ」と言われるが、ワイン製造は資本集中型の要素が強いビジネスであり、ブドウの価格が主なコスト要因となる。さらに言えば、ワイン(より具体的に言えばワイン用ブドウ)には、さまざまな質や種類のものが存在する。ヨーロッパやラテン・アメリカのような大量にワインを製造している地域では、ブドウ園を移植して、ブドウの成長を改善し、ワイン製造技術を向上することで、市場も同様に大きく変化しつつある。

(※3)年収7万5千ドル以上の世帯は、自分達を「富裕層」であると認識しており、高級品を買う傾向にある。したがって、Wal-MartやCostcoが一般向けであるのに対し、Targetは彼らから多くの売上を上げている。

米国:米国ワイン産業(2)へ続く

出展:Business Economics - バーバラ・インセル(ストーンブリッジ・リサーチ・グループCEO: ストーンブリッジは、カリフォルニア、ナパを拠点とするワイン業界コンサルティングファーム)





他サイトへのリンク

英語テープ起こし・音声翻訳
アシストは、日本語インタビュー・会議の音声を
英語音声・書記録にいたします

http://www.glopeer.com/assist

Lux Research Japan
Qualitative Market Research
Premium brands, fashion, travel B2B

http://www.luxresearchjapan.com

Online Research - GPScale
GPScale is an independent online research and
strategy consultancy based in Tokyo.

http://www.gpscale.com