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2009/01/31


高級顧客は電気自動車、買う気あり

BusinessWeek

これまで自動車企業の幹部は、電気駆動技術に多大な投資を行ってきたが、その出費を正当化できるだけの需要予測ができず常に不安であった。しかし、コンサルタント会社、ベイン&カンパニー(Bain & Co.)が、新たに行った調査によれば、電気自動車の市場は着実に出来上がりつつあることが明らかになった。

調査は、米国、中国、日本、ドイツなどの8カ国、4000人を対象に実施され、その中で、高所得者は、全電動の電気自動車を、短距離移動用のセカンドカーとして買う準備ができていることが明らかになった。「製品があれば、消費者は今にでも買うだろう」と、ミュンヘンの自動車業界専門パートナーのGregor Matthies氏は述べた。

電気自動車の需要は、既に高級自動車を所有している人たちの間で最も高い。彼らは金銭的な余裕があり、環境への関心を周りの人に知ってもらいたいが為に購入したいと考えている。「彼らは、高い金額を払っても良いと思っているだけでなく、環境への関心のを払い、環境に対して何かを訴えかけたいとも思っている」と、Matthies氏は言う。他の発見として、都心エリアの消費者は、電気自動車の用途を短距離移動用のみに想定し、走行距離が限られている事に対しては、概ね理解を示している。長距離移動用には、依然、ベンツなどを使い続けることを考えているようだ。

これまで電気自動車ベンチャーが抱えてきた数々の問題を考えれば、これは驚くべき結果であった。ノルウェーの『Think』は、昨年末、破産申請を行い、現在立て直しを図っているところであり、また、カリフォルニアの『Tesla』も苦しい状況に置かれている。

しかし、今やっと、電気自動車導入への動きが進み始めきたのかもしれない。ドイツでは、電気自動車の開発に対して、奨励金の提供が行われている。また、米国では、オバマ大統領のイニシアチブにより、既存の内燃エンジンの代替品が奨励される機運にある。都市レベルでは、パリやロンドンが、より静かでクリーンな、電気自動車を推し進める動きを図っている。

これに加え、ドイツのBosch(ボッシュ)や中国のBYDなどの企業の取り組みの結果、バッテリーのコストが急激に下がっている。数年のうちに、26,000ドルの電気自動車の大量生産も可能になると考えられる。ベインの見積もりによれば、この価格で、米国の電気自動車の市場は、年間、150,000台〜175,000台の市場になる。

電気自動車は、また、自動車メーカーにとって、燃料価格や環境の問題で消費者が自動車に関心を寄せない時であっても、車を販売できる新たな方法となりうる。ベインの調査では、トヨタ(Toyota)、ダイムラー(Daimler)、フォルクスワーゲン(Volkswagen)、BMWなど、有名ブランドから、電気自動車を買いたいと考えている消費者が多いことも分かった(米国メーカーはこの質問では対象外となっている)。「消費者は、信頼できるブランドから電気自動車が販売されることを期待している」と、Matthies氏は述べた。

しかし、電気自動車の大量販売市場の出現は、既存の巨大自動車メーカーにとっては大きな危機である。電気自動車へのシフトにより、公共事業者など、新たな競合が市場に参入してくることを、既存メーカーは恐れている。かつて、無線ネットワーク業者が、携帯電話の新規購入価格に補助金を出してきたように、今度は公共事業者が、電気自動車の新規購入価格に補助金を出すかもしれない。そのような状況になれば、既存自動車メーカーは、営業と設計に関するこれまでのコントロールの一部を失うことになりかねない。さらに、バッテリーメーカーのBYDのような新規参入企業も、既存の自動車メーカーに挑戦を挑むことも考えられる。

自動車メーカーが抱える、他の課題としては、新規競合企業に対して、製品を差別化することである。電気モーターは、内燃エンジンほど組み立てが複雑ではなく、簡単なギアボックスがあれば良いだけであり、さらに、本来的にパワーが出ても静かに動く。これまで、BMWや、レクサス(Lexus)、メルセデス(Mercedes)販売の原動力となってきた質の高いエンジンは、電気自動車では特別なものではなくなってしまうだろう。

そこで、これからは、デザインが主要な競争要因になってくることが考えられる。自動車メーカーの中には、素晴らしい製品デザイン技術を持った企業との提供を始めるところが出てくるかもしれない。実際、ベインの調査では、Apple(アップル)から自動車が販売された場合、購入したいと思うかが質問された。ヨーロッパ圏の人々うち、21%が買いたいと回答し、BMWの48%に比べると小さい数字ではあった。しかし、この数字はこれまで自動車を作ったことがない企業としては驚くべきものである。既存自動車メーカーは、自分たちが市場を占有できると考えないほうが良いようだ。

実際、電気自動車の取り組みは、既存自動車メーカーでも行われており、BMWは、カリフォルニアやニューヨークエリアの一部地域の顧客を対象に、電気自動車を展開している。また、多くのメーカーが2010年からの販売を考えている一方、三菱では、今年中の電気自動車販売を期待されている。これまで多くのフライングスタートが報告されてきたが、やっと電気自動車時代の幕開けが訪れるのかもしれない。





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