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2016/06/30


高級ブランド・マーケティングの特徴

高級ブランド製品(サービス)でも、大衆向け製品(サービス)でも、マーケティング活動の目的は消費者からの「必要性」を生み出し、その製品(サービス)を欲しいと思ってもらうことです。マーケティング活動の目的は同じですが、しかし、高級ブランド品のマーケティングのアプローチは、製品特徴の違いのために大衆向け製品のアプローチとは少し異なります。

私たちは季節に合わせて洋服を買ったり、物を運ぶために鞄を買ったり、交通手段として車を買いますが、その目的を達成するためには大衆向け製品で十分です。実際に多くの大衆向け製品が、何らかの目的を達成するために購入されています。目的を達成するためだけであれば、高級ブランドの洋服や鞄を買ったり、高額な海外ブランドの自動車を購入する必要はありません。しかし、それでも決して少なくはない数の消費者が実際に高級ブランドの製品を購入しています。高級ブランドを選ぶ消費者は、その製品によって達成すべき合理的な目的だけではなく、気持ちの高揚や興奮を求めて、あえて高額な製品を購入しています。

このような製品特徴の違いがあるために、高級ブランド品では大衆向け製品とは異なるマーケティングアプローチを検討することが重要です。

現実的で合理的な大衆向け製品のマーケティング

大衆向け製品のマーケティングの多くは、現実世界の問題を解決することを主な訴求点にしています。例えば、速乾性シャツの広告キャンペーンでは、「汗が早く乾く」ことや「汗をかいても着心地が良いこと」などを訴求しています。また、低燃費車のマーケティングキャンペーンでは、「ガソリン代が抑えられること」や「家計の負担を軽くすること」などが主な訴求点です。

また、合理性に基づいて訴求点が論理的に説明されていることも大衆向け製品マーケティングのもう1つの特徴です。多くの大衆向けマーケティングでは実際に、「なぜ、その製品を買う必要があるのか?」という点が論理的な理由とともに説明されています。「洋服がただ今バーゲン中」や「他の靴下よりも同じ価格で長持ちします」などの売り込みキャンペーンがその例です。「今買えば安い」ことや「コストパフォーマンスが良い」という購入行動を論理的に正当化する理由が、消費者に向けて提供されています。

憧れや感情に訴求をする高級ブランドのマーケティング

一方で高級ブランドのマーケティングは、消費者が抱いている憧れや理想の世界に訴求するものが多く見られます。例えば、高級車を所有したら人気者になって生活が一変したり、高級ブランドの洋服を身につけたら理想の自分に変われるような想像を与えるような広告キャンペーンなどです。現実的な日常の問題解決に訴求をするのではなく、その製品やサービスを購入することで理想の世界や理想の自分、憧れや願望に手が届くような印象を消費者に与えることが高級ブランドマーケティングの特徴です。

また、高級ブランドマーケティングのもう1つの特徴として挙げられるのが、訴求方法がより感情的で、必ずしも合理性や論理性が重視されないことです。大衆向け製品のマーケティングでは合理的に基づいて「頭」に訴えることがその特徴でしたが、高級ブランドマーケティングは感情や経験を重視した「心」への訴求を大きな特徴としています。高級ブランドのジュエリーを買うことは必ずしも値段に見合った効果を与えてくれるかどうかは分かりません。しかし、他では経験できないような理想の世界や自分の願望に近づけてくれるような広告キャンペーンを見ていると、消費者は理屈ではなく感情的に、そのジュエリーを購入しなければならないような気持になってしまいます。このように現実から離れた夢や憧れを訴求点として、それを消費者の感情に訴えることが高級ブランドマーケティングの大きな特徴です。

高級ブランドマーケティングにおいて重要なこと

高級ブランドマーケティングにおいては、消費者が心の中に抱えている「憧れ」や「願望」という感情を明らかにすることが非常に重要です。このような感情は、時には彼ら自身が気が付いているものもあれば、彼らの意識下に眠っていたり、なんとなく気が付いていても上手く人に伝えることができないようなものもあります。

グループインタビュー(FGI)やデプスインタビュー(IDI)などの定性調査手法は、このような消費者の心の奥深くにある「憧れ」や「感情」を明らかにするために有用な手法です。定量調査手法と呼ばれるアンケート調査のような手法では、一方向の定型的な質問に対する回答しか得られないために、本人が意識していない感情や、複雑な心のメカニズムを明らかにすることは困難です。特にブランドに対する感情などは、アンケートに答えるために一度「あたま」で考えた瞬間に、客観的に見て一見合理的と思われるもっともらしい答えに置き換えられてしまいます。一方、定性調査手法ではインタビュー対象の反応によりフレキシブルに質問を変えることができ、投影法などを用いて様々な角度からの考えや反応を見ることができるので、消費者の感情に関する重要なインサイトを見つけ出していくことが可能です。このような定性調査手法を用いて、消費者の感情の真相を明らかにしていくことが、高級ブランドマーケティングの第一歩です。

» ラックス・リサーチ・ジャパンの定性調査手法

<了>






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