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2016/07/09


Brexit(イギリスのEU離脱)による高級ブランド業界の影響

イギリスのEUからの離脱は世界経済に大きな影響を与えると見られているが、高級ブランド業界もその例外ではない。

各ブランド幹部や業界の識者は、イギリスのEUからの離脱は高級ブランド業界に為替の変動による影響や、マクロ経済の不安定さ、貿易協定の不透明さをもたらすと見ているようだ。実際にポンドは記録的な安値を更新しており、ユーロもその価値を落としている。しかし、この為替変動は反対に高級ブランド市場に恩恵をもたらす可能性がありそうだ。

個人向け高級ブランド企業の多くはイタリアとフランスの企業であり、ユーロ安は主要な高級ブランド市場であるアジアやアメリカでの商品価格を下げて、売上成長を助ける可能性がありそうだ。

イギリスも、高級企業組合Altagammaによれば、バーバリーを筆頭に市場の7%ほどを占めていると言われており、英ポンド安に魅力を感じる中国人旅行者や海外顧客が、大きく売上を後押しする可能性があると言われている。しかし一方で、バーバリーは原材料の調達や製造を主にイタリア国内で行っていると言われており、ポンド安による対外貨における相対的な製品価格の下落の恩恵を受ける一方で、材料コストや製造コストに増加による価格の上昇が起こるのではないかと予測されている。このコストの負担を大きく見る識者は、バーバリーのようにヨーロッパ本土から製品を調達しているイギリスのブランドは、他のヨーロッパ本土の高級ブランドに市場シェアを奪われる可能性があると見ている。

また、特にファッションブランドに関しては、イギリスのブランドは大きな痛手を被る可能性があると見られている。現在ロンドンはファッションの主要都市の1つであるが、EU加盟各国がイギリスの高級ブランド品に関税をかければ、ロンドンにオフィスを構えるデザイナースタジオや出版社、メディア企業はイギリスからパリやミラノに移り、イギリスはヨーロッパファッションの主要都市から孤立してしまう。

為替変動によるメリットがある一方で、Brexitがもたらす経済の不透明さや、それがもたらす消費者の消費意欲の減退も無視はできない。一般に景気の先行きが見えない状況では、人々は投資や高額品の消費は控える傾向にある。ヨーロッパにおける高級ブランド品の消費は中国人を中心とした外国人旅行者に頼る部分が大きいが、パリやブリュッセルでの事件により旅行者の足が遠のく中で、今回の離脱はさらに高級品の消費に悪影響を与えそうである。

Brexitの高級ブランド業界への影響は、多くの要素が絡んでおり、業界関係者や識者の間でも様々な意見が交わされているが、まだまだ今後の動向を注意深く追っていく必要がありそうだ。

コンサルティングファームBain & Companyの予測によれば、今年の高級ブランド品業界は1%の成長が見込まれている。

<了>






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