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2008/04/12


さまざまな面を持つシンガポール

The Star Online

シンガポールでは、物価の高い社会の中で、下流階級20%が惨めな暮らしに立ち向かっている一方、上流階級10%は富裕地域で暮らしている。そして、3つめのグループである、最も大きい中流階級がある。

あるシンガポール人カップルが、ランボルギーニのショールームに入り、1人に1台、65万米国ドル(204万RM: マレーシア・リンギット)する車を買った。

「子供のような若者がやってきて、200万シンガポールドル(4.7RM)もの買い物をするなんて驚きだ。」店舗マネージャーはジャーナリストに言った。「彼らは30歳にも満たない。」

昨年、ランボルギーニでは、フェラーリの26台を抜く、29台が国中で売れた。

2007年、ロールス・ロイス、ベントレー、ロータス、アストン・マーティン、マサラティを含む、320台もの高級車が、シンガポールの新たな富裕層に売れた。

にわか成金が脚光を浴びる中、より多くの貧民地域のシンガポール人は、政府からの食糧援助を期待している。

増え続けるホームレスは、ビルの空きスペースで寝泊りをし、高い生活費に圧迫を受け、多くの老年市民がトイレ清掃や、リサイクル空き缶集めの仕事をしている。

シンガポールは依然として、大きな中流階級を抱える社会であり、数多くのショッピングプラザがそれを証明している。しかし、グローバル化や急騰する物価の結果、中流階級は減少傾向にある。

470万人からなる市民の生活は、2つ、多分3つの側面を持っている。上流10%は、富裕地域に住み、ヨットを所有し、1食に1万シンガポールドル(23,209RM)を使う富裕層だ。

下流階級20%の市民は、国際都市の高物価構造社会の中で苦しむ貧困層。3つめは、最大の中流階級だ。

Carol Johnさん、27歳のケースを見てみよう。彼女には、ベッドが無く、毎晩、3人の子供とマットレスの上で寝ている。彼女の家は、ワンルームのアパートで、他の住民との共有の廊下からトイレの臭いが漂うようなところだ。

「貯金なんて到底できない」と、無職のJohnさんは言う。彼女は、夫の月給600シンガポールドル(1,392RM)と、国の援助の100シンガポールドル(232RM)を頼って生活をしている。

それでも彼女は、空き地でやビーチで寝たり、公衆トイレで水浴びをしている、ホームレスの高齢者や家族よりはずっとましだ。

シンガポールは、国民一人当たりのGDPが48,900米国ドル(154,141RM)の、日本に次ぐ、アジアで2番目に裕福な国家だ。

大阪の多くのホームレスや、ニューヨークの”バッグ・レディーズ”に比べれば、ホームレスの数はずっと少ない。

実際、シンガポールの10人に9人は、家を所有し、電話や冷蔵庫もある。

しかし、部分的には、不安要素もある。中央銀行のデータによれば、月間所得1,000シンガポールドル(2,320RM)以下の国民の割合は、2002年の16%から、昨年18%までに達した。

最大の問題は、シンガポールには他の国に比べて、セーフティー・ネットや、クッションとなる地域が無いため、失業者にとっては生活が苦しいということだ。

マレーシアやタイとは違い、国際市場でやっていけない失業者には、逃げ場となる地方都市が無い。

問題はさらに悪化しており、金持ちにはより多くの金が流れ、中間層や貧困層の生活は、程度の差こそあるものの、改善されていない。

収入の不平等さを測るジニ係数(国民所得分散係数)は、1998年の42.5から、2006年は47,2と、悪化しており、国際銀行によれば、フィリピンの46.1、グアテマラの48.3、中国の44.7と同程度である。

日本、韓国、台湾のような、他のアジアの裕福な国家のジニ係数は、よりヨーロッパのものに近い、それぞれ24.9、31.6、32.6という数字になっている。

これは、「民主的社会主義」を政策としているにも関わらず、近年の国民行動党が招いた失策だ。

民主的社会主義という政策のもとに、初期の国民行動党のリーダーは、貧しい社会を、裕福な中間層の社会に導いてきた。

経済専門家によれば、最も大きな問題は、能力のある人を富を得て、そうでない人や、年配の人、病気の人には苦境を強いてきた国際化であるとのことだ。

しかし、良い教育を受けてきた人も安心はできない。

リストラクチャリング、リロケーション、業務アウトソースなど、今までは聞いたこともない新たな経営手法の利用により、格差が広がり、収入の不平等性が増大している。

たとえば、低所得者の割合が増えている一方、8,000シンガポールドル(18,570RM)以上稼ぐ人の割合は、4.7%から6%にまで増加した。

この不平等さの拡大は、大きな中流階級という基本的な社会構造を、最終的には崩しかねない。

日本人戦略コンサルタントの大前研一氏が最初に紹介した、日本の中流階級崩壊の危機が、既に起こっているのかもしれない、という経済専門家も中にはいる。

日本では、ごくわずかの中流階級が上流階級への階段をのぼり、その他は徐々に下流階級に落ち込んでいくという、階級分散のM字化現象が起こっている。

国民の生活水準は悪化し、人々は、失業の危機、もしくは給与の下落に直面していると、彼は言う。

車を買う代わりにバスに乗り、高級レストランに行かずに食費を抑える、買い物でお金を使わない、など国民の生活は徐々に、下流階層化しつつある。

この現象は、経済が成長を続け、平均給与所得が上がっていても、起こりうるだろうと、大前氏は言う。

富やお金は、社会の中のごく数人のポケットに集まっているだけだ。

多くの人は、その経済成長の恩恵を受けことはできず、生活水準は落ちていく。

中流階級の支持により力を得ているシンガポール政府は、経済格差の平準化が最優先事項であることをこれまで明言してきた。それは影響力の維持のために他ならない。





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