2008/12/01

米国：高級ブランド、広告費を削減 1/2

2007年の古き良き時代、ラグジュアリーブランドには、金が降り注いでいた。

昨年１２月、デザイナーのマーク・ジェイコブス氏（Marc Jacobs）は、８００人のゲストを呼び、ロックフェラー・センター（Rockefeller Center）での１年に１度のパーティーを開催した。ゲストには、Ｖｏｇｕｅ、Ｗ、ＨＡＲＰＥＲ’ＳＢＡＺＡＡＲの人々が呼ばれ、アラビアン・ナイトをテーマに、タブロウヴィヴァン、曲芸師、５つのオープンバー、上半身裸に金ネックレスをつけた女性、頭上の燭台のバランスをとる上半身裸の男性、１箇所にはゲストの頭上に降り注ぐ金のきらめきのシャワーが用意されていた。

過去１８年間、ジェイコブ氏はこのパーティーを続けてきたが、今年１１月４日、「金融情勢により、2008年のペーティーはキャンセルせざるをえなくなりました。」とのショートメッセージが届けられた。

今年長らく安泰だった高級ブランドが、被害を被り始めている。景気後退とは、比較的無縁であった、富裕層顧客の消費が落ち込むことは無かったが、ここ数ヶ月で状況が変わりつつある。小売・サービス業の消費動向を予測している、マスターカード・スペンディングパルス（MasterCard SpendingPulse）の報告によれば、高級製品への消費は、６月に僅かに落ち込み始めた後、１０月単独で、２０．１％も落ち込んでいる。

この下落は、高級製品・サービス業の広告に頼って成長してきた、米国の雑誌や新聞にとっては、さらに悪いニュースであった。

主要な高級雑誌の広告ページは、１２月発行分で、前年比の２２％落ち込んだと、メディア業界ニュースレター（Media Industry Newsletter）は伝えている。Ｖｏｇｕｅでは、例えば、昨年１２月の２８４ページから、今年１２月には、２２１ページに減っており、Ｆｏｏｄ＆Ｗｉｎｅでは、１６０ページから１２０ページに減っている。

この広告ページの削減は、出版社側が経費削減を狙ったものであり、コンデ・ナスト社（Condé Nast）は、Ｍｅｎ’ｓＶｏｇｕｅの出版回数を１０回から２回に減らし、ＣｏｎｄｅＮａｓｔＰｏｒｔｆｏｌｉｏの回数も削減し、雑誌全体の予算を５％減らすと発表した。ＧｏｔｈａｍとＨａｍｐｔｏｎｓを出版するニッチ・メディア社（Niche Media）は、社員を解雇し、住宅雑誌を廃刊した。Ｄｅｐａｒｔｕｒｅｓ、Ｔｒａｖｅｌ＆Ｌｅｉｓｕｒｅ、Ｆｏｏｄ＆Ｗｉｎｅなどの雑誌を抱えるアメリカン・エクスプレス出版（American Express Publishing）は、社員の４％を解雇した。

「これは今までに見たことの無い状況だ。」とＤｅｐａｒｔｕｒｅの編集担当であるエド・ヴェンティミリア氏（Ed Ventimiglia）は言う。「皆、自分が何をすべきか分からず、どこか混乱している。」

今年始め、高級広告は、好調な広告カテゴリーの一つであった。実際、ニールセン・モニター・プラス（Nielsen Monitor-Plus）の調査結果において、ほとんどのカテゴリーが売上減の中、高級広告の売上は、今年８月時点で、昨年同時期と比べ、６．７％増えていた。

出版社もこのトレンドを逃すこと無く、ダウジョーンズ社（Dow Jones & Company）は、高級製品・サービス向け広告を狙い、高級雑誌のＷＳＪを投入し、ワシントン・ポスト（The Washington Post）も、ファッション雑誌のＦＷを開始した。ニューヨーク・タイムズ（The New York Times Company）はスタイル系雑誌が自社の収入源であると発表し、ハースト社（Hearst）、コンデ・ナスト社、ニッチ・メディア社などの雑誌出版社も、高級消費と高級広告の売上が伸びることを期待していた。

今のところ、出版社は、各ブランドに広告掲載をしてもらう努力を続けているが、市場調査会社のユニティー・マーケティング（Unity Marketing）の調査によれば、富裕層顧客の半分以上は、１年前に比べ消費を減らしている。富裕層顧客の消費傾向は、過去５年の中で、最低である。

「この業界には、『高級ブランドは、景気後退に影響を受けない』という固定観念があった。これは、今となっては、ばかばかしいが。」と、ニューヨークの高級ブランドマーケティングのコンサルティング会社、ポイント・ワンパーセント（Point One Percent）の創始者である、アレクサンダー・ダックワース氏（Alexander Duckworth）は言う。

「これはまだ始まりに過ぎない」

＜続く＞

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