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2008/12/10


クラブメッドはバランスを取ろうとしている―高級路線を追求するリゾート企業

THE WALL STREET JOURNAL

パリ―5年前、フランスのリゾート運営会社である、クラブメディティラネーSA(Club Mediterranee SA)は、中流層向けの屋外アクティビティというイメージから、高級ブランドへの路線変更に着手し始めた。

そして今、5年の構造改革の終結に向かって、会長兼最高経営責任のアンリ・ジスカールデスタン氏(Henri Giscard D'Estaing)が舵を取っているが、不安定な世界経済の影響で、クラブメッド(Club Med)の壮大な計画は打撃を受けうる状況にある。

この計画はまだ進行中であり、昨年、顧客数は、改革を始めて以来はじめて増加したが、クラブメッドは、800万〜1000万ユーロ程度の損失を抱えていた。今年は、ジム事業とジェットツアーズ(Jet Tours)の80%の株式の売却により、12月11日に発表される年間実績では、1%台の利益がアナリストの間で予測されている。

「2009年に利益を出すことは難しいだろう」と、フランス証券仲介会社、ExaneBNPパリバ証券(Exane BNP Paribas)のアナリストである、マティアス・デスマレ氏(Matthias Desmarais)は言う。「消費者が支出を抑え、クラブメッドにとっては難しい年になるだろう。」

とはいえ、元フランス大統領の息子である、ジスカールデスタン氏は、会員制オールインクルーシブ休暇パッケージという新たな領域で、同社を展開していくという目標に向けて懸命になっている。

クラブメッドは、木造小屋で知られる低コストリゾートとして1950年に営業を開始した。これまで55のリゾートを閉鎖し、20の新たなリゾートを開いて、木造小屋や共同シャワーが無くなって久しい。

今日では、「ヴィレッジ」と呼ばれるリゾートの半分以上に、4つ星もしくは5つ星のランクが与えられ、アルマーニ(Armani)、ラルフローレン(Ralph Lauren)のようなブランド品を販売しているショップが用意されている。フランスの、クラブメッド・ペイズィーヴァランドリー(Club Med's Peisey-Vallandry)のスキーリゾートでは、スワロフスキー(Swarovski)のジュエリーでさえ買うことができる。

2009年、業績はさらに悪化する見通しである。ExaneBNPパリバのアナリストによれば、2,400万ユーロの損失が予測されている。クラブメッドがターゲットとする富裕層行楽客は、不景気の影響で、出費の少ない休暇の過ごし方を求めており、アナリストは2011年までに収益性が回復することは無いと見ている。

一方、クラブメッドは最高級のラグジュアリーサービスを提供しており、不景気でも、顧客は休暇に使うだけのお金は持っていると、ジスカールデスタン氏は言う。

彼が、何とか微妙なバランスを取ろうとしているのは明らかだ。クラブメッドは、ターゲット市場を上流に移すことで収益と利幅を増やすとともに、トーマスクックグループPLC(Thomas Cook Group PLC)やエクスペディア社(Expedia Inc.)のような旅行業者の提供する、低価格・低コストのインターネット休暇パッケージとの面と向かった競争を止めたいと思っている。

しかし、この戦略が失敗した場合、クラブメッドは中流・上流のそれぞれの市場ですでに確立されている競合―格安のインターネット事業者、及び、ヒルトンやハイアットなどの高級リゾート―との競争に、資金力が無い状態で挑まなければならない状況に陥るだろうとアナリストは言う。

不動産市場の低迷も大きなダメージであった。サービスの高級化のためには、リゾート施設の土地を売り払い、建物は借り戻すというのが、通例だろう。ジスカールデスタン氏は、クラブメッドは、9億ユーロの土地を売る可能性があるとしている。しかし、今の経済情勢でその土地を売ることが難しいこともまた、認めている。

この問題に対する回避策として、クラブメッドは、自社の保有するモーリシャス(Mauritius)の土地に、建設を予定している高級別荘の販売を始めている。別荘の購入者は、別荘を利用していない間は、クラブメッドに別荘を貸し出すことができ、その間、クラブメッドの顧客がそこを利用した場合、収益の一部をもらうことができる。2007年6月、モーリシャスの16の別荘が、総額2,220万ユーロで販売された。

クラブメッドは、また、これまでのイメージから脱却する必要がある。同社は、これまで世界70のリゾートの改装に約10億ユーロを費やしてきたが、ラグジュアリー(高級)というイメージはまだ確立されていない。今年は、さまざまな場所で日光浴をする人々をフィーチャーした、「幸福が最も大事(Where happiness means the world.)」のタグラインを用いた、広告キャンペーンを開始している。

また、顧客基盤を東洋に拡大し始めている。同社は、世界の潜在顧客6,000万人のうち、2,600万人はアジアの人々に見込んでいる。今後5年をかけて、中国に2つの新リゾート建設を計画しており、また、バリ(Bali)リゾートを5つ星ヴィレッジに改装しようとしている。

不況にも関わらず、同社は、長期的な見通しについては、慎重ながら楽観視しているというのがアナリストの見解だ。オランダ系銀行・投資・マネージメントグループのフォルティスN.V(Fortis N.V.)のアナリストである、Thomas Alzuyeta氏は、「もし彼らのターゲットが中流向けのままであったならば、今より状況はさらに悪かっただろう」と推測している。

ジスカールデスタン氏は、これから幾つかの課題に直面しなければならないことを認めている。「陽気さの中にラグジュアリーを統合することは、新たな創作である」と彼は言う。「簡単なことだろうか?そんなことはない。可能だろうか?私はそう思う。」

出典:THE WALL STREET JOURNAL





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