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2009/11/07
ソーシャルネットワークを怖がるマーケティング担当のためのハウツー
高級ファッション企業にとって、「イメージ」はすべてである。 グッチ(Gucci)やエルメス(Hermes)のようなブランド企業は、権威を保つことによって、GAPやH&Mのような企業と一線を画している。 しかし、その他と一線を画しているという意識により、これらのブランドは、現在最も強力なマーケティング戦略であるソーシャルメディアに取り組むことを怠ってきた。
高級ファッション企業は、製品の面では流行の先端を走っているが、ことメディアの使い方に関しては驚くほど時代遅れである。 ほとんどの企業は、単に雑誌などの広告スペースを購入し、光沢のある見開き2ページで自社のイメージを伝えている。 従来メディアが今後も、高級ファッション企業にとって重要な広告媒体である一方、ソーシャルメディアは、今後マーケティングミックスの一旦を担っていく存在なのである。
何故、いま、これらの企業が『社交(ソーシャル)をする』べき時なのだろうか? まずは、分かりやすい説得力のある数字で説明しよう。 8月に行われたトラベラーズエンタープライズ(Travelers Enterprise)の市場調査結果によれば、米国の成人人口の約半分が積極的にソーシャルメディアサイトを利用している。 また、Facebookの統計調査によれば、次世代の高級消費者(ジェネレーションY)の96%が、現在ソーシャルメディアを利用している。 また、ヒル・ノールトン社の調査によれば、次世代の高級消費者の27%がソーシャルメディアサイトから得た情報を、商品購入の意思決定際の参考情報としている。
数字は別にしても、ソーシャルメディアは、高級ブランドが提供するものの核心を突いている―情熱である。 ルイヴィトンの新作リチャード・プリンス・バッグ(Richard Prince bag)のウェイティングリストに名を連ねたり、シャネルの秋の新作コココクーンコレクション(cocoon collection)の事前予約をしたり、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)に列を作る熱狂的なファンたちは、それらのブランドにもっとも熱心な顧客である。 彼らは、また最もロイヤリティの高い顧客でもある。 彼らを顧客としない手はないのではないだろうか?
最後に、高級企業がソーシャルメディアに飛び込む最大の理由がある。 それは、ブランドにとってもっとも熱狂的な顧客とソーシャルネットワークを通して、直接コミュニケーションをとることができない場合、彼らに勝手なブランドのイメージを作られてしまうリスクがあるということだ。 FacebookやTwitterには、そのブランドが直接関わっていない無関係のブランドサイトがあふれ返っている。 ブランド各社が顧客と直接やり取りをしない場合、何が起こるだろうか? Twitterの@123dolcegabbanaと、Facebookのエンポリオ・アルマーニのファンページに行けば、その答えを見つけることができる。 両者ともにファンによるディスカウント購入の自慢や、ファッション批判でにぎわっているが、ブランドからのオフィシャルな発言は一つも無い。
ソーシャルメディア戦略の開始を決断することは、Facebookのアカウントを作成するほど簡単ではない。 ソーシャルメディアを始める前に、いくつかポイントがある。
1.ブランドが適切な「声」を届けること。 特別感や近づき難さを売りにしている高級ファッションブランドにとって、これは、ソーシャルメディア戦略を進める上で最も難しいことかもしれない。 FacebookやMySpace、Twitterは元来カジュアルで、パーソナルなものであり、ブランドのウェブサイトで見られるようなお決まりの文句などとは全く違う。 開始にあたって、デザイナーやクリエイティブディレクターを登用するのが良い。 「ニューオーリンズのサックスで、ミシシッピの女性と一緒です」とデザイナーがつぶやく。 また、コーチ革製品のFacebookのウォールに、これが「本当のコレクション」と書き、乳がん研究基金との提携プロモーションを進める。 これらは、ブランドが自分達の顧客向けに作ったコンテンツによって、ブランドが声を届けている良い例である。
2.一貫したコミュニケーションを遂行すること。 どのくらいの頻度でコミュニケーションを行うかを決定し、それを持続すること。 FacebookやMySpace上でのコミュニケーションは、週に数回程度になるであろう。 また、Twitterでは、文章が短く断続的であることを考慮すると、もう少々回数は増えるであろう。
3.ブランドのソーシャルメディアサイトを顧客が簡単に見つけられるようにすること。 ブランドのウェブページに、「Facebook/Twitter/MySpaceへはこちら」との紹介文をつけると良いだろう。 このようなリンクでサイトのブランディングを邪魔されたくない高級ブランド企業であれば、「会社情報」「ニュース」「メール購読」「購入の確認」などのセクションにリンクを置くのも良いだろう。 また、ソーシャルメディアサイトで検索をした場合でも、ブランドの公式サイトが出てくるようにすべきである。
4.会話をすることを―時には批判も―想定すること。 ソーシャルメディアにおいて、企業は単に一方的に情報を押し流すだけでは駄目である。 企業は返事をもらうことを想定し、良い事も悪いことも上手く処理ができるよう準備をする必要がある。マーケティング担当にとって、このようなリアルタイムの直接的なフィードバックは貴重であるとともに、危機管理の良い練習になる。 難しい問題をどのように処理するかを計画しておくべきである。
5.ソーシャルメディア用にオリジナルコンテンツを作成すること。 どんなに素晴らしいウェブサイトを持っていても、その内容をそのまま再利用してソーシャルメディアのプラットフォームにすることにエグゼクティブは納得しない。 ラルフローレンは非常にダイナミックで双方向性のあるウェブサイトを持っている。 しかしそのコンテンツは一字一句違わずFacebookでも見ることができる。 最新の情報はどちらに載せてあるのだろうか? ルイ・ヴィトンは最近ソーシャルネットワークを始めたようであるが、適切な方向を目指しているようである。 同社は2010年春の既製服ライブショーをFacebookのフォロアーのみに向けて放映し、それを新たなファン獲得のインセンティブとして、また従来の熱狂的な顧客への見返りとして利用するようである。 バーバリーもソーシャルメディアを利用している。 同社のページではデザイナーのクリストファー・ベイリーがビデオでFacebookのファンに感謝の言葉を述べており、彼が個人的に書き込みの内容を読んでいることと、そのメッセージがここでしか見れないことを述べている―これがコア・フォロアーとの間にロイヤリティーや関係性を築くための賢い方法なのである。
6.8:2の法則に従うこと。 ソーシャルメディアは参加をして関係を築くためのフォーラムであるため、常に広告を流しておくためだけに利用するべきではない。 コンテンツの8割はそのブランドのファン達に情報提供をし、動機を与え、楽しませ、関係を築くために使い、残りの2割は製品関連のメッセージに使うのが良い。 顧客がブランドとの関係や興奮をより感じることができれば、より広告のメッセージを受け入れるようになる。
ソーシャルメディアの利用を考える高級ブランドのマーケティング担当は、自分の責任で見ていかなければならない。 すべてのマーケティングニーズを満たすための確実な方法はないが、上手く使えばソーシャルメディアはブランドへの情熱や製品への欲求を刺激するための大きな武器となり、多くの忠実なフォロアーを増やすことができる。
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