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2009/12/15
アラブ首長国連邦(UAE)の都市国家であるドバイの統治者達は、ここ数ヶ月の間、ドバイ・ワールドに関する不安をのんきに退けてきた。 ドバイ・ワールドとは、投資や土地開発におけるUAE政府の主要持ち株会社である。 「我々は何も心配していない。」首長のムハンマド・ビン=ラーシド・アール=マクトゥーム氏は2ヶ月前の記者会見で述べた。 このときドバイは少なくともGDPの100%の借金を抱えており、おそらく125%近くであったかもしれない。 後に、ドバイは借金返済に向けて何も現実的なプランがないと批判する人々に対し、アール=マクトゥーム氏は「shut up(だまれ)」と答えた。 11月24日、ドバイ政府は12月14日が期限の4億円ドルの返済を前にして、債務支払いの停止を検討していることを発表した。 これにより不安を抱えた多くの投資家が、ドバイ・ワールド傘下の不動産会社ナキール社の債権保有企業に電話会議を試みたため、回線がパンクした。
ドバイの崩壊により、世界市場に波及するであろう新たな金融問題に対する懸念が一気に広がることとなった。 株式指標は落ち込み、ドバイの債務不履行に対する保険料は跳ね上がり、投資家がドルを買い戻しに走ることでドル高が進んだ。 11月27日午後、アナリストがドバイの支払中止による影響を見直し始め、株式市場には幾らかの回復が見られた。 ドバイの総負債額が800億ドルと聞けば非常に多額に聞こえるが、昨年の状況においてはそれほど大きな額には聞こえなかった。 HSBCやバークレイズ(Barclays)のような銀行はドバイに対する数十億の債務残高があり、1年前よりも十分な対策がされているためこの規模の打撃には対抗することができている。
ドバイの問題は、その巨大さ、傲慢さ、野望が原因である。 湾岸の首長国は、UEAを構成する他の首長国とは異なり、石油やガスがほとんどないため、自身がビジネスや運輸の中心となり、世界でも最大のもっとも輝かしくモダンな不動産を築きあげることに集中をしてきた。 多くの人々を引きつけるため、ドバイは世界の富裕層や中上流階級のためのタクスフリー・リゾート化をこれまで進めてきた。 ドバイの総合計画者たちは、新たに作り出される富の象徴として、インドアスキー施設、大きなヤシの木型の人工島上の高級コンドミニアム、どこよりも高い高層ビルなどやりすぎなものを開発してきた。 しかし昨年世界市場が崩壊し、ドバイの不動産市場も同様の被害を受け、ナキール社のような不動産開発業者はプロジェクトを終わらせ、業者に支払いをするのにもがき苦むようになった。 投機家たちは逃げ出し、数千いた海外駐在員や地域の株主たちには売ることのできない未完成のコンドミニアムや住宅だけが残された。 居住物件は昨年の半額までに価格が下がり、世界でも最大の下げ率だった。
11月27日、UAEの首都であり石油で潤うアブダビは、隣国ドバイのてこ入れのために100億ドルの融資を行った。 アブダビが再度融資を行う可能性はあるが、次回はより多額の支援が必要であるだろう。
世界金融危機の発生以来、地味な湾岸の首長国は、比較的上手くやっている。 中東は他の地域に比べそれほど世界金融市場の影響を受けておらず、さらに石油価格は昨年はじめの落ち込みから再び回復をしてきている。 ドバイとは異なり、中東の石油経済は好況な時期にはそれほど目立つことはなく、多くの投資がインフラ関連のプロジェクトや、文化施設に投資され、現金の太いパイプは万一の時に備え手元に置かれていた。 ドバイはうらやましがるかもしれないが。
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