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2008/04/03
新興経済において高級品の需要が高まる一方、従来の高級品市場の先行きは不透明 - ボイド・ファロー
1月中旬、きれいに磨かれた石畳、ガラスの通路、飾られた中庭の8,000uの豪華なミラノ本部において、エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)は2008-2009の秋冬コレクションを公表した。メンズ高級服飾チームが、温度変化を調整する最新のハイテク素材を声高に話す中、CEO は現在の経済の冷え込みがしばらく続くだろうと予測した。
米国サブプライムローン問題を原因の一端として今年の売上は遅れ、その埋め合わせは新興市場に頼ることになると、ジルド・ゼニア(Gildo Zegna)は発言した。「セールスは伸びるが、2桁成長は無いだろう」と続けた。「米国経済の落ち込み、日本は横ばいだが、ヨーロッパの順調な伸びや、中国、東南アジア、東欧の伸びはまだ期待できる。新興市場に感謝する。」と付け加えた。
ゼニアの感謝は、ヨーロッパの高級品巨大企業にとっても同様だ。昨年11月、モスクワでの業界カンファレンスにおいて、 LVMH会長ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)は、高級製品の売上は、主に中国、ロシア、インド、及び東欧、ラテンアメリカの市場成長のために、2倍の3,000億ユーロに達するだろうと予測した。アルノーはまた、GDPの28%を占める一方、まだ高級品市場の16%しか占めていない西欧、日本、北米も更なる成長が見込めると予測している。実際、十分に開拓されていない米国市場の一部は、成長市場のような一面を持っており、それが彼の強気な見通しにつながっている。
モルガン・スタンレー投資銀行業務部門代表のFranck Petitgas氏によると、米国の低迷や西欧の緩やかな売上成長に関わらず、各高級ブランド企業は、第3期の業績を、平均12%〜16%の成長と発表した。新興市場は重要な役割を果たしたと彼は言う。
13億の人口を持つ中国の重要性は計り知れない。中国において高級品市場は20年前には存在しなかったが、今や30万人の富裕層と約2億5千万人のミドルクラスを抱えるまでに拡大した。ゴールドマン・サックスが、2015年までに中国の消費者は高級品売上の29%を占め、日本に次いで第2位になると予測する一方、アーンスト・ヤングは、2006年に40億ユーロが費やされるだろうと見積もっている。
またロシアも、モスクワの大手デパートであるTSUMやGUMや、Stoleshnikov PereulokやTretyakovsky Proyezdの込み合ったブティック通りのように石油産業により小売業が発展し、興味をかき立てる巨大高級品市場だ。
しかし、フォーブス・マガジンがモスクワには53の億万長者が存在すると書く一方、一般所得とミドル層のサイズはロシア全体で増加している。Rublyovkaのラグジュアリーヴィレッジの2005年のオープンは、高所得層向け小売がモスクワ以外の地域でも成長していることを示している。また、TSUMとGUMは、St Petersburgや人口が100万人を超えるロシアの9都市で不動産業に積極的に取り組んでいる。
サルバトーレ・フェラガモ(Salvatore Ferragamo)のCEO、Michele Norsa氏は、旧ソ連の15諸国は2億8600万人を数えると強調した。「ヨーロッパ高級店舗におけるウクライナ顧客の平均額は、ロシア顧客よりも高い。Baku、Kiev、Vilniusのような裕福な都市は驚くべきだ。」「成熟市場が比較的減速傾向にある一方、BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)経済の成長と今後の開拓の余地が、高級品業界に明るい将来を約束してくれると信じているのはこのよう理由からだ。」と彼は言う。
もっとも良い指標となるのはインドだ。インドでは、2006年、8%の経済成長を記録し、160万世帯は70,000 ユーロを稼ぎ、高級製品に6,000ユーロ以上を消費している。他の多くのアナリストが今後5〜10年の間に、インドは最大の高級品市場になるだろうと予測する一方、アナリストTechnopakは14%の成長を予測している。ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)CEOのイヴ・カルセル(Yves Carcelle)は、数百年前インドの王達は、高級ブランドの最も大きな顧客だったと述べた。「これは最も重要なことだ、なぜなら、高級品の伝統が無い国もあるからだ。」彼は言う。
インド政府は2006年、単一ブランド製品小売業に対して51%のFDI(外国直接投資)を認め、インドの高級品ルネッサンスは始まった。2010年までに、インドに新たに300のショッピングモールができるだろうと予測されている。今月から、ニューデリー郊外の顧客は、高級品別館のあるエンポリオモールを訪れることができる。70以上の国際レーベルがエンポリオモールの開発業者であるDLFのハイデラーバード、チェンナイ、ムンバイの開発計画に参加の意思を表明している。
にも関わらず、一部の専門家は、新興市場の売上が、特に景気後退の可能性がある中で、米国やヨーロッパ経済の低迷を短期間に埋め合わせるという意見に懐疑的だ。JPモルガン証券の高級市場リサーチ部門代表のMelanie Flouquet氏は、中東、ロシア、中国、ラテンアメリカ、インドは急速に成長するかもしれないが、まだ、世界の高級品売上の18〜20%しか占めていないと述べている。中国は、6〜7%、中東は5%、ロシアは4%、その他新興市場は2%と彼女は言う。
Flouquet氏は、LVMHやPPRのような巨大高級品複合企業は売上の15〜22%を新興市場に見込んでいると述べ、まだインフラが整っていないインドは、高級品企業の現在の豊富な売上源に比べると、潜在的な可能性に過ぎないと警告している。金融コミュニティー全体は、ドル安と信用規制により経済が米国からの分離されるかどうかを見守っていると加えつつ、「日本とヨーロッパは成長する。」と彼女は言う。
過去4年間、多くがヨーロッパを拠点とする高級ブランド企業は、ユーロ高ドル安に取り組んでこなければならなかった。それは、米国内での売上が伸びていたとしても、2007年の米国売上は、2003年ほど最終損益に効果をもたらさなかったことを意味する。
1月22日、アジア株が一晩にして5%落ち込み、ヨーロッパマーケットの急落が始まった後、リーマンブラザーズは、全高級品業界を"negative"に格下げした。一方で、Bernstein ResearchのLuca Solca氏によれば、一般経済の問題は、高級品業界、特に最高級品マーケットに参入した企業にまで飛び火する。
年が始まるとともにハイテク素材に取り組んでいるような高級ブランドの経営者は、ゼニア氏だけではないようだ。
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