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2009/01/18
ローマ: 世界の富裕層のため息とともに、フランチェスコ・トラーパニ氏は、$10,000の鋼と白金のブルガリ(Bulgari)時計を取り外し、ブランド名の霞んだ底面をあらわにした。ブルガリは製品の眩い外観に見合うよう、ひとたび、そのブランドを輝かしいものに磨き直した。
僅かながらであるが状況は変化しており、過去20年近くで初めて高級品の売上の低迷がし、市場にコスト意識を蔓延させた。これまでブルガリ(Bulgari)、バーバリー(Burberry)、カルティエ(Cartier)、モンブラン(Montblanc)、そしてその他のデザイナーブランドもこのコスト意識を強いられており、魅惑と煌きにフォーカスをしてきた従来手法からの修正を余儀なくされた。
この修正は大きな挑戦であり、ブルガリの品質保証付きの宝石を磨くくらい繊細なことである。ブルガリはその華麗で排他的なブランドイメージを数十年をかけて慎重に磨き上げ、カンヌやオスカーのレッドカーペットでブルガリを身に着ける、二コール・キッドマン(Nicole Kidman)、シャーリーズ・セロン(Charlize Theron)、スカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)などのスターにより強化してきたが、もしCEOであるトラーパニ氏がコスト削減を強く推し進めすぎれば、そのブランドイメージを傷つけかねない。
「スターや消費の話をするのではなく、コスト削減の話をしたいのでしょう。」と、オフィスインタビューで、テベレ川(Tiber)を見渡しながら、トラーパニ氏は答えた。「高級業界も例外ではない。」
トラパーニ、51歳にとって、倹約は性に合わない。彼は、リヒテンシュタイン(Liechtenstein)の王女を妻に持つ、熟練のヨットマンである。彼はこれまで名声を追い求め、祖父が立ち上げた小さなブティックを、世界的な高級ブランドグループにまで作り変えた。
しかし、企業利益が前四半期に44%落ち込み、株価が急激に落ち込むとともに、彼の選択肢はなくなった。12月、株価は4.76ユーロに近づき、これは1年前の半額以下の額であった。
1990年代以来、高級製品の売上は、新たな世界的エリートである富裕層の成長と共に、爆発的に増加した。そして、かつては無名であったヨーロッパのブランド企業を巨大グループに変え、フィフスアヴェニュー(Fifth Avenue)、ボンドストリート(Bond Street)、シャンゼリゼ(the Champs-Elysees)のようなオシャレな区域を、中流上層階級のための野外モールに作り変えた。
ブルガリは特に、このトレンドの典型であり、1984年にトラーパニ氏がCEOを引き継いだ時のたった5店舗から、今や259店舗までに成長した。ブルガリの、サファイア、ダイアモンド、エメラルドをあしらった大胆なコンビネーションは、販売が世界中に広がるとともにニーズは増え、企業収益を11億ユーロ(14.1億ドル)以上に引き上げた。
昨年秋のウォールストリート(Wall Street)の崩壊とと時を同じくして、トラーパニ氏は、パリのブルガリ旗艦店の豪華なオープニングと、中東初となる自社ブティックのデビューパーティーを主宰した。
今、ブルガリを含め、高級業界の各企業は厳しい現実に直面している。創立125年の宝石商であるブルガリの売上は、第3四半期、僅かに2%伸びただけに留まった。そして、通常、年間売上の大部分を占める第4四半期も、アナリストは回復に関して悲観的な予測をしている。ベイン&カンパニー(Bain & Company)が最近実施した調査によれば、高級品ニーズは今年、3%〜7%落ち込むだろうと予測されており。これは1990年代初頭に調査が始まって以来、初めての落ち込みとなる。
コンドッティ通り(Via Condotti)のブルガリのブティックには、クリスマス前ラッシュの兆候はなかった。このブティックは、リチャード・バートン(Richard Burton)が、かつて、エリザベス・タイラー(Elizabeth Taylor)のためにダイヤモンドを買った場所であり、唯一無二の商品が最低70,000ユーロ(88,900ドル)する。
「この悪い状況の中での見せびらかしは、非道徳的だ」と、ベインの高級品スペシャリストであるClaudia D'Arpizio氏は言う。「たとえ購買力に関して実際に影響を受けていなくても、消費者は道徳的に消費を抑えようとしている。消費者はこれ以上、宝石を欲しないだろう。」
厳しい現状に反応して、トラーパニ氏は、リース契約済み以外の新規出店の計画を棚上げし、幅広いコスト削減に着手してきた。
カルティエ(Cartier)、モンブラン(Montblanc)を有するリッチモント(Richemont)グループが、新規出店を中東やアジアなどの急成長市場のみに絞る一方、バーバリー(Burberry)も、同様に、コストの削減を始めている。
「過去の景気減速は、特定の地域に端を発したものであり、その終わりを予測できた」と、バーバリーCEOのAngela Ahrendts氏はインタビューに答えた。「今回は世界的なものだ。先週、過去5ヶ月で5回、最悪のシナリオを繰り返さざるを得なかった投資家と一緒であったが、我々はまだそれにも行き着いていない。」
トラーパニ氏によれば、ブルガリは、現在抱えているリース料節約のために、貸主と再交渉を行っている最中である。また、サプライヤーには、最高級品に用いるダイヤモンド、サファイア、その他宝石をより安値で仕入れるよう、プレッシャーをかけている。
さらに、時計バンドのランクを落とすなど、1商品あたりたった数ユーロのコスト削減を行っているが、年間4,000ドル〜32,000ドルもの時計を何千も売る企業にとっては大きな効果である。ブルガリ香水に関しても、トラーパニ氏によれば消費者は気づかないだろうと言うが、低価格パッケージやボトルを用いたものを売り出している。
「見た目とコストのバランスを取ることが必要だ」と、トラーパニ氏は言う。「ブランドイメージと品質に悪影響を与えることなく、コストを削減し、出費を抑えることが課題である。」
時計バンドの中で、「こちらの方が着け心地が良く、コストもかからない」と彼は言う。
しかし、たとえ原価を落とし利幅が比較的高くなってしまっても、トラーパニ氏は、商品を低価格で提供するようなことには反対している。
「これは売上を伸ばすために価格を落とすような商売ではない」と彼は言う。「それは完全な間違いだ。」
大きなスタイルの変更や、値下げこそ検討されることはないが、ブルガリの最高級ハンドメイド・ジュエリーなどを作っている作業場など、社内の基本オペレーションでさえ変えられようとしている。
ルービー、エメラルド、サファイアなどの裸石が、ペンやペーパークリップのように無造作に置かれているこの場所では、研磨師が病欠した場合には、金細工職人が研磨を含めた2つの役割を担うことになっている。
年末休暇に間に合うように21人の金細工職人が、急いでネックレスやイヤリングを作り上げていく大変な時期にあっても、残業代はほとんど廃止されてしまっていた。
もちろん、最高級の装飾品向けダイアモンドのニーズが完全になくなったわけではない。最近訪れた時には、3人の職人が、B.C.5世紀のギリシャコインをイメージしたカフスボタンや、ダイヤモンドとサファイアをふんだんに使ったペンダントイアリングなどのカスタムオーダー商品を、忙しく仕上げていた。
「生涯の職業を変えるつもりはない。神に感謝します。」とニコラ・ブルガリ氏は言う。彼は、トラーパニ氏の叔父で、ヴァイスチェアマンである。
「宝石は、自尊心を満たす、人生の楽しみの一部である。空想の世界であり、愚行でもある。男性はいつも女性に恋をしており、彼女たちを幸せにしたいと思っている」と彼は言う。
しかし、67歳にもかかわらず現役で最高級コレクションのデザインを現役でしているブルガリ氏でさえ、今の経済の現実に適応していかなければならないだろう。彼は、アメ車のヴィンテージコレクションに新たなものを追加するのを止めている。
「もし、必要があれば、売ることもあるだろう」と彼は言い、公開されている自社の株式も買い続けていることを付け加えた。ファミリーが支配権を持っている。
「これは皆に与えられたテストなのだ」と、この厳しい時期を表現する。「彼らが、バーグドルフ(Bergdorf)やサックス(Saks)で何を売っているか知っている。彼らは、人員整理の大鉈を振るっている。」
彼は、ブルガリの香水事業が明るい話題であることも言及している。「消費者は、明日がないかのように、香水を買っている。」「これは慰めであり、高価なものでもないため、消費者は購入に対して、罪悪感を感じないのだろう。」
ジョバンナ・ガンバレッリさんは、これに同意している。
ガンバレッリ氏は、最近、ローマ郊外にある、知る人ぞ知るブルガリの工場直販店で、お買い得品を物色していた。この直販店は、金細工職人がカスタムメードの商品を作っている、厚いガラスと厳重なセキュリティで守られた作業場から数ヤードのところにある、
ロレックス(Rolex)の時計とティファニーのブレスレットをひけらかしながら、39歳のガンバレッリさんは、3年前、コンドッティ通りでどんな買い物をしていたかを思い返していた。今年、大幅値下げのラベルのついた時計を見ながら彼女は言った。「もし新作でなくてもよければ、ここには何でもあるし、40%引きで買えるのよ。」
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