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2008/04/10


インディアン・サマー

Forbes.com

セイコーのような企業にとって、巨大消費市場にへの投資は遅くとも、しないよりはまし

Atsushi Kaneko氏は、インド南部の主要都市であるバンガロールにある、彼のオフィスに向かい階段を上っていた。そして、階下のエレベータドアを見て首を傾げながら、立ち止まった。日本の時計メーカー、セイコーの50歳になるインド事業のトップは、管理人が玄関に貼り付けた注意を見て、エレベーターを使うことが怖くなった。6人乗りであるにもかかわらず、注意書きには、5人以上で乗らないよう書かれていた。「理由を尋ねたのだが、はっきりとした答えは得られなかった。」と、階段を上りながら、彼は説明した。

Kaneko氏は、セイコーホールディングスから、インドの成長しつつあるミドルクラスへの時計の販売を狙った現地販売拠点を立ち上げるために派遣されたのだが、今、インドでの危機感を感じていた。日本の自動車メーカー経営陣が素早くインド経済での開発を行ってきた一方、他の企業も、エレベーターの問題は別としても、これまでうまくやってきた。

インドブームが長続きしていることで、日本企業は不安感をなだめ、競って現地店舗を立ち上げてきたが、その多くは、ヨーロッパ、アメリカ、その他地域からのライバルが、既に多く存在していることに気が付いた。

「インドへの参入を検討している海外企業がまだまだ多く存在し、日本企業は、分析不足であっても積極的に参加すべきだ」インドの大手不動産開発会社DLFのトップであり、有数のビジネスマンである大富豪、Kushal Pal Singh氏はそう助言する。

インドはショッピング熱が高まっており、その消費量は2025年までに、4倍の1兆8000億ドルに達すると予測されている。インド政府リサーチ機関であるIBEFによれば、去年前半期でテレビの売上は15%増加し、去年第1四半期のPC売上は、47%急増した。10億人のインド国民の内、1/4は携帯電話を所有し、毎月500万人が新規に取得している。

2005-2006年の最新の数字では、日本の1/5の経済規模の韓国からのインドへの輸入は、日本の工場からの360億ドルを超える、430億ドルに達した。SamsungとLGが、液晶テレビ市場を席巻し、合わせて65%のシェアを占めている。Sony (nyse: SNE - news - people ) は14%で後を追っている。「我々は競合他社よりも早く、インド市場に液晶テレビを導入した」と、Samsung広報担当のEunhee Lee氏は説明する。昨年の販売量は、4倍の17万台に達した。

バンガロールに戻ると、Kaneko氏は楽観的だ。「もし6ヶ月前に来ていたとしても、どうせ遅すぎた」と彼は認めている。しかし、彼は成長経路を見定めている。彼のスタートは、スイスのSwatchグループと、Omega、Tissot、Hamilton、 Longinesを含む高級時計ブランドの集まりだ。

これまでの売上は、売上20億ドルの時計メーカー、その子会社として部品を提供しているセイコー・エプソンにとっては、ほんのわずかだ。Kaneko氏は、時計ショップの展示スペースを、どの程度Swatchから奪い取れるかを計算している。とりわけ、セイコーを参入させることは、「どこかを追い出す」ことだ、と彼は言う。店舗オーナーが言うには、スイス企業は、もし日本企業にスペースを明け渡せば、商品を引き上げると警告しているそうだ。そのような脅しは「わずかばかり市場への参入を遅らせるだけだ」とKaneko氏は言う。

セイコーの名前をインドに広めるために雇い入れた広報担当とのミーティングを終えると、Kaneko氏と、セールス・マーケティング部門長のNiladri Mazumder氏は、社用車のトヨタバンに乗り込み、週末の買い物客でに賑わうモールにある時計店のオーナーに会うために、バンガロールの昼下がりの交通渋滞の中に向かっていった。最も良い展示スペースを提供してくれるオーナーには、通常の卸価格に割引をしている、とKaneko氏は説明してくれた。彼はまた、トップセールスの店舗にはトロフィーを贈呈し、また、何人かのオーナーに日本への旅行を提供することも考えている。これらの戦術が功を奏し、これまでセイコーは、当初の計画を大きく上回る81の店舗をインドに出店することができた、とKaneko氏は誇っている。

モール型ショッピングスペースか急速に展開したことで、セイコーのような消費者製品が多くの顧客を引き付けてきたが、実は地方政策も一役を買っている。2005年、日中関係が悪化するとともに、小泉首相は、デリーからムンバイまでの720マイルの輸送路建設のための数十億ドルを含む道路・線路資金の出資を約束するなどインドへの友好政策を実施し、東京への興味が高まった。一年後、日本からの直接投資は2倍の5億1500億ドルに達し、インドは、バンガロールの流通政策のための低金利借り入れを含む、日本開発援助の最大の得意先になった。

タイミングは偶然にも一致した。海外企業のインド参入を支援する、ムンバイのUniversal Consulting社のディレクター、Samir Sathe氏によれば、セイコーが競争に加わった時には、高級品市場は既に年間20%の拡大を続けていたという。

1970年代、ほとんどのインド人に高級品を買うお金がない時代、海外旅行の際に買ったり、海外の親戚から送ってもらい、セイコーの時計をすることが大流行した、と彼は説明する。「私が子供のころ、もし父親がそれを持っていればそれはすごいことだった。」彼の父は、当時買ったセイコーの時計をまだ大事に持っている。しかし、セイコーはチャンスを逃してしまった。

「インドの発展は、日本を驚かせた」と、ジェトロバンガロール支店のKazumasa Kuboki氏は言う。セイコーは、今や、現地に最大の工場を持つトヨタとともに、バンガロール進出に間に合った90の日本企業の一つだ。既に、工場やオフィスに最適な場所はもう残っておらず、これからの新規参入企業は、工場用地を探すのに、都市部から60マイル離れた場所を探すことになるだろうと、 Kuboki氏は言う。

道路投資の不足は、人口600万都市の渋滞を意味する。先を急いでクラクションを鳴らす、自動三輪、自動車、トラック、スクーターの不協和音は、この都市での日常だ。この渋滞を緩和するであろう地下鉄は、この6年間完成していない。こうしている間にも、スクーターから、 Tata Motorsなどが安価で提供する快適な自動車に乗り換える家族が増え、道路事情は悪化している。

しかし、セイコーの展開を妨げているのはその道路事情だけではなさそうだ。官僚化や汚職、もしくはその両方が不安要素となっている。日本から輸入品を検査する税関職員は、近年、賄賂を要求してくると、Kaneko氏は言う。彼は、賄賂は渡していない。

バンガロールで生活する330人の日本人の生活は、孤立しうる。小規模地域社会の2軒の日本食レストラン繁盛しているが、都市のどの大きい市場でも、日本食に定番の、もち米、味噌や魚介類を扱っていないと、ジェトロのKuboki氏は言う。日本への直行便も無ければ、海外居住者の子供のためのフルタイムの日本語学校も無い。

そして、日常の危険もある。

昼食を食べながら、Kaneko氏とコルカタ出身の早口の営業マネージャーMazumder氏は、2階上のイタリア食堂に上がり、建物の新たなエレベーターのルールについて話をする。階下の道路を指しながら、Mazumder氏は話す。道路を渡って事故にあうのと同じくらいの確率なのだから、エレベーターを使ってみてもいいだろう。彼の助言によれば、インドでビジネスをする時には、「鮫の場所を知るために、水中に飛び込むことも必要だ」とのことだ。





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