2009/06/14

定量調査ではできない定性調査でできること

定性調査を行う場合、気づくと、まわりの人に一生懸命、その正当性を説明しなければならなくなっていることがないだろうか？　しかし、マーケティングに関わり２５年、本当に企業の競争優位に関わるインサイトが、いかに多く、定量調査よりも、定性調査から得られてきたかに、私は感銘を受けている。

マーケティング担当の中には、『正確である』定量的手法の方が、定性的手法より勝っていると考える人がいる。　しかし、広範囲の問題を扱う場合、定性的手法は、消費者行動や商品ブランドに関わるより深く、実用的なインサイトを一貫して発見することができ、その点においては、定量的手法よりも非常に優れているのである。

費用対効果から考えても、定性調査は、画期的なマーケティング手法や、新たなアイデアにつながるようなインサイトをより多く生み出しやすい。

では、それは一体何故なのだろうか？　定性的アプローチが、定量的アプローチよりも優れている５つの特徴を、以下に挙げる。

定性調査では、意思決定者が、深く調査プロセスに関わることができる。　ブランドや広告に関する消費者の意見を、リアルタイムで聞くことは、問題を検討したり、意思決定を行う上で、大きな刺激となる。　定性調査を通して、マーケティング担当者は、あるアイデアに対して消費者がどんな直感的反応を見せるかを理解できるようになる。　さらに調査プロセスを通した経験をもとに、さまざまな要素を考慮した意思決定を、即座に行うことが可能である。
グループインタビューは、他の構造化された調査に比べ、動的であるため、対象者から活発な意見を引き出すことができる。　オープンエンド調査でさえ、しばしば、いい加減な回答をされがちである。　しかし、定性調査では、思いつきの回答や、表面を取り繕った回答のさらに深層をプローブ（深掘り）することができる。
グループインタビューのシナジー効果で、対象者が他人の考えをもとに、新たなアイデアを築き上げることができる。　効果的な定性調査においては、対象者は会話に没頭し、目の前にある課題を何とか解決しようという気にさせられる。　良いインタビュアーは、対象者が自分の本心を話すことが当然であるという雰囲気を作り、対象者はより自分の考えを出すことができる。
定性調査では、対象者が自意識により、自然な反応やコメントを控えるのを、回避する投影技法を用いている。　この投影技法では、隠喩を利用したり、実際の課題を物語に置き換えたフリーアンサー問題を用意し、消費者の深層心理を明らかにすることができる。
唯一、定性調査でのみ、言語以外の反応を観察したり、分析することができる。　グループインタビューでは、これにより消費者理解に新たな次元が加えられる。　消費者研究においては、家庭、オフィス、車内、店内の消費者の行動を体系的に観察することが、調査の本質である。　定性調査では、どのように実際の製品やサービスが利用されているか、顧客がどのように製品や店舗環境と接しているのか、また、定量調査では知ることのできない行動の側面などが明らかにされるのである。

消費者調査を行うと、人々は、はっきりと言いたくなかったり、他人に伝えることが難しかったり、今まで意識することがなかった、感情や態度や価値を持っていることが分かる。　しかし、定性調査は、対象者に自由で生き生きとした回答を求め、消費者の創造性を活用し、表面を取り繕った回答の深層を究明できるために、一貫して、大きな成果を得ることができるのである。

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