2009/08/19

スウォッチグループ前半期の業績に、高級市場の回復を期待

スウォッチ・グループ（Swatch Group Ltd.）は、今月、小売注文の増加と、今年前半期の期待以上の業績を報告した。　これにより、世界の高級品市場に対する期待が高まっている。

スウォッチ・グループは、世界最大の販売量を誇る時計メーカーであり、それほど高額でないスウォッチ（Swatch）時計から、高級ブランドとして知られているブレゲ（Breguet）まで、さまざまなブランドを傘下においている。　同社によれば、売上は、昨年の２９．７億スイスフラン（約2,606億円）から１７％落ち込み、２４．８億フラン（約2,176億円）となった。　一方、総利益は、昨年の4億1,800万フランから、２８％減り、3億100フランであった。

大方の予測を上回ったこれらの業績は、同社が、現在の難しい市場をうまく立ち回ることができたことを示していると、専門家は述べている。

さらに重要なことに、同社は、在庫調整はひと段落つきつつあると報告している。　小売業各社はこれまで、在庫調整のために、新規注文よりも現存在庫の削減に注力しており、これが原因で、過去２四半期の高級品に対する需要が落ち込んでいた。

「小売業が、通常レベルでの注文を再開している」とスウォッチ・グループは報告している。

今年１月～４月に比べ、５月始めの売上傾向は非常にポジティブなものであったが、今年後半に売上が回復することを見込むのは、少し楽観的であると同社は見ている。　しかし、このポジティブな傾向は、『外部時計メーカーからの部品注文のキャンセルにも関わらず、今後数ヶ月間続くであろう』と予測している。

スイスのサラシン銀行は、スウォッチ・グループの株価を、ニュートラルから買いに、格上げした。　『スウォッチ・グループは、アジア地域におけるスイス時計に対する需要の伸びを享受できるポジションいる。　また、スイス時計の輸出は、今後数ヶ月の間に改善する見込みである。　これらが、株価を押し上げるトリガになる。」と、アナリストは述べている。

シティは、今月、スウォッチ・グループを買い評価にするとともに、目標株価を２００フランにすると発表した。　同社の地域性、製品構成の良さや、安定したバランスシートに競争優位性があるとして、スウォッチ・グループは、依然、高級業界において特別な存在であるとアナリストは評価している。

スイス時計製造業の７月の輸出データは、８月２０日にリリースされる予定である。

貿易統計によれば、スイス時計業界の売上は、世界金融危機の影響で、今年前半期に２６％落ち込んでいる。　この影響で、これまで、数百のスイス時計職人が職を失っている。

スイス時計製造業界における、もっとも最近の危機は、1970年に、アジア製のクォーツ時計が人気を博した時で、多くの職人が余剰人員になる羽目となった。

スウォッチ・グループは、ブランド志向の強い地域で認知度が高く（実際、同社のオメガ[Omega]ブランドは、数十年前から中国市場に進出している）、かたや、日本や米国などの現在問題を抱える市場には、それほど力を入れてこなかったために、現在は、それが良い方向に働いている。　アナリストの調べによれば、スウォッチ・グループの一番の競合であるロレックス（Rolex）の米国での露出度は、３倍～４倍である。

また、スウォッチ・グループのビジネスモデルは、現在、不景気にもっとも大きな影響を受けている高級ブランドに、それほど依存していないと、アナリストは述べている。

多くの人が、スイス時計業界の底入れを、来年と予測しているが、金融危機前のレベルには、すぐには回復しないというのが、大方の見方である。

業界リーダーの多くは、短期的な回復の見込みに対しては、悲観的である。　今年前半ほどの勢いではないが、後半も引き続き、売上は減少するであろうと、ジュネーブの高級品メーカーであるリシュモン（Compagnie Financiere Richemont S.A.）のＣＥＯ、Norbert Platt氏は述べている。

資産運用会社バーンスタインのアナリストによれば、高級品に対する需要は、今後３～５年間は、小さいままである。　パリを拠点とし、高級市場で世界最大の売上を誇るLVMH モエヘネシー・ルイヴィトンS.A.（LVMH Moët Hennessy ‐ Louis Vuitton S.A.）は、宝石、ファッション、時計、アルコールまで多種多様なブランドを取り揃えており、このような状況では、非常に競争優位性があると、同アナリストは述べている。

７月、ＬＶＭＨは、前半期の売上が２３％落ち込み6億8,700万ユーロとなり、一方、売上は０．２％増の７８億ユーロとなったと、報告している。

バーンスタインでは、スウォッチ・グループはマーケットパフォームの格付けであり、目標株価は１９５フラン、リシュモンは、マーケットパフォームの格付けで、目標株価は２２フラン、ＬＶＭＨに関しては、アウトパフォームの格付けで、７９ユーロの目標株価である。

スイス証券取引所において、８月１４日スウォッチ・グループの株価は、２６．９０フラン、もしくは１２．８％増加し、２３７フランに近づいた。　一方、ライバルであるリシュモンの株価は、同調して５．５％伸び、２８．５６フランに達した。

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