2009/06/25

高級時計ブランドのポジショニング

高級ブランドと言えば、真っ先にあがるものの１つが高級ブランド時計ではないだろうか。　実際、日本人の多くが高級時計に強い興味を示し、何十万もする時計を所有している。　ある消費者アンケート調査の結果では、関心がある海外高級ブランドの中で「時計」がトップとなっているものもある。　また、Ｇｏｏｇｌｅにおいて、『高級ブランド』とともに検索される製品名は、『時計』がもっとも多いとのことである。

市場を見ても、日本には高級ブランド時計が溢れている。　日本のウォッチ（腕時計）市場は、2007年時点で6,259億円（矢野経済研究所調べ）であるが、その８割、つまり約5,000億円を、インポートウォッチが占めているという。　あらゆる海外ブランドの時計が、小売店やオンラインで購入でき、ロレックス、オメガ、タグホイヤーなど、人気の海外高級時計が、時計専門店以外の、量販店、中古ブランド販売店でも数多く並ぶことを考えれば、その数字にも納得できる。

高級ブランド時計は、高級製品の中でも比較的価格帯が高い部類にあるが、海外の高価な時計を取り寄せてまで身につけたいという日本の消費者の傾向は、日本人の高級ブランドに対する考え方を如実にあらわしているのかもしれない。　日本人は、高価な良いものを身に着けることで、自分の社会的地位をアピールする傾向が、欧米諸国に対して強い。　その反面、日本の社会的慣習として、あからさまに自分の富や地位を主張することは、良しとされていない。　どんなシチュエーションでも身につけることができ、袖口からちらりとのぞいて、その高額さをアピールできる腕時計は、日本人が他人に自分をアピールするための、格好のアイテムなのかもしれない。

さて、上述の通り、日本には高級ブランド時計が深く根付いているが、各ブランドの性質や、位置付けを理解することは、日本の高級時計市場を理解する上で非常に興味深い。　そこで、特に高級ウォッチ（腕時計）に限った、ブランドのポジショニング図を、下図にまとめる。　この図は、ｘ軸に『ドレッシー⇔スポーティー』、ｙ軸に『クラシック⇔モダン』を定め、円の大きさは、各ブランドウォッチを入手できる最低帯を示している。　最低価格帯を１つの軸に用いた理由は、高級ブランドにとって、排他性は非常に重要な要素であり、簡単に製品を入手できない価格設定であることは、そのブランドがより高級であることを意味するからである。　また、ｘ軸、ｙ軸の配置には、『リアル・リッチの世界〔セオリー〕vol.9』を参考にさせていただいた。

チャートは、４象限に分かれているが、同書によれば、ブランドがどの象限に属するかで、そのブランドを利用するユーザーの傾向がことなるという。　『クラシック x ドレッシー』の領域は、コンサバな老舗の企業経営者タイプ、『モダン x ドレッシー』の領域は、型破りで自己顕示欲が強い人のタイプ、『クラシック x スポーティー』の領域は、公私バランスの取れた若手エグゼクティブタイプ、『モダン x スポーティー』の領域は、独特な感性を持つクリエイタータイプとのことである。

チャート全体として、緑円のエントリーブランドに比べ、青円の超高級ブランドは、図の外側に分散しており、独自の方向性を強くその製品に反省させていることが伺える。

今回対象とした時計ブランド：　ティソ（TISSOT）、ロンジン（LONGINES）、ハミルトン(Hamilton)、エルメス(Hermes)、タグ・ホイヤー(TAG Heuer)、ブルガリ(Bulgari)、オメガ(OMEGA)、モーリス・ラクロア(Maurice Lacroix)、カルティエ(Cartier)、ブライトリング(BREITLING)、コルム(CORUM)、ロレックス(ROLEX)、IWC、ジャガー・ルクルト(Jaeger-LeCoultre)、ショパール(Chopard)、フランクミュラー(FRANCK MULLER)、ゼニス(ZENITH)、パネライ(PANERAI)、ブレゲ(Breguet)、グラハム(GRAHAM)、ロジェ・デュブイ(ROGER DUBUIS)、パテック・フィリップ(Patek Philippe)、オーデマ・ピゲ(AUDEMARS PIGUET)、ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)、ウブロ(HUBLOT)、ランゲ＆ゾーネ(A.LANGE＆SOHNE)

高級時計ブランドのポジショニング

サイト内リンク

他サイトへのリンク