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2010/09/16


さまざまな富裕層の定義

富裕層とは、一般的には高額な所得や資産を持つ世帯を指し示す言葉であるが、いわゆる世間で言う「お金持ち」である。また富裕層は、金融サービスや高級品・高級サービスを提供する企業が自社顧客を特定する上で重要なマーケティングにおける市場のセグメンテーションでもある。

英語で富裕層に近い言葉はHigh Net Worth Individual(HNWI)であり、直訳すれば高額資産を持った個人である。プライベートバンクビジネスにおいては、HNWIとは通常100万ドル以上の投資可能資産(実需住居は含まない金融資産)を持った個人と定義される。また米国においては米国証券取引委員会(SEC)もその規制上、HNWIのことなる定義を発表している。HNWIも含め『富裕層』という言葉には国内・海外を含めさまざまな定義がなされているが、下に紹介する定義は比較的よく利用されている例である。

» アップデート: 富裕層(HNWI)の定義と規模 (2016/07/22)

ワールドウェルス・レポート(世界の富に関する報告)による定義

メリルリンチ・キャップジェミニ・ワールドウェルス・レポートでは100万ドルの金融資産を保有している人々を富裕層、3,000万ドル以上の金融資産を保有している人々を超富裕層と定義している。ただし金融資産には、コレクター品、消耗品、耐久消費財、実需住居は含んでいない。

2010年版の同レポートによれば、富裕層は2009年には世界で1000万人おり、その富の合計は39.0兆ドルであったという。特に香港とインドの成長によりアジアパシフィック地域の富裕層は近年増加の傾向にあり、2009年に初めてヨーロッパと同程度の人数(300万人)となり、その富の合計は9.7兆ドルとなり、ヨーロッパ富裕層の合計9.5兆ドルを凌いだという。一方で世界の富は未だ集中しており、米国、日本、ドイツの3ヵ国で2009年の世界の富裕層の人口の53.5%を占めている。

一方、超富裕層の富は2009年、世界の富裕層の富の35.5%を占め(およそ13.8兆ドル)、人数では世界の富裕層の0.9%を占めた(およそ9万人)。


The Merrill Lynch - Capgemini World’s Wealth Report 2010による富裕層の範囲と人口、富の大きさ

レポートの富裕層の定義から一旦離れるが、クレディ・スイス(Credit Suisse)、BNPパリバ(BNP Paribas)、ドイツ銀行(Deutsche Bank)HSBC、JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)UBSなどほとんどの大手銀行では超富裕層向けの専門部署が設けられ、超富裕層向け製品や相談業のスペシャリストからなるチームが構成されているという。

また、ベントレー(Bentley)、マイバッハ(Maybach)、ロールスロイス(Rolls-Royce)などさまざまな自動車ブランドは、超富裕層や富裕層を自社顧客として重視している。ロールスロイスが集めた数字によれば、世界には超富裕層に属する人は80,000人いるという(2006年)。超富裕層は、平均して車8台と家を3、4件所有しており、彼らの3分の1はジェット機をもっており、ほとんど全員がヨットを所有しているとのことである。

米国証券取引委員会(SEC)の定義

SECに登録している投資アドバイザーは定期的にForm ADV言われる申請書の提出が義務付けられているが、その中で顧客の何名が『富裕層(HNWI)』であるかを記載しなければならない。Form ADVにおいて『富裕層(HNWI)』は、アドバイザーにより管理される金額が75万ドル以上の個人、もしくは、総資産がアドバイザーが論理的に考えて150万ドル以上と考えられる個人と説明されている(この総資産には配偶者のものも含まれる)。このSECの定義では、実需住居や美術コレクション品などの非金融価値資産も資産額に含まれている。

日本市場における定義

日本市場においては、野村総合研究所が2005年に金融資産保有額別のマーケット規模を推計したデータが有名である。この調査では、預貯金、株式、投資信託、債券、一時払い生命・年金保険などを含めた純金融資産の保有額(負債を差し引く)によって、「超富裕層」「富裕層」「準富裕層」「アッパーマス層」「マス層」に分類して、マーケット規模や世帯数が推計されている。この推計では「富裕層」は金融資産1億円〜5億円、「超富裕層」は金融資産5億円以上と定義されている。

■富裕層・超富裕層マーケットの規模の推計(2005年)


出典:富裕層ファミリー(野村総合研究所, 東洋経済)

厚生労働省による国民生活基礎調査では全国を対象とした所得の分布状況を下図のように報告している。このデータによれば、年間所得2,000万円以上の世帯はわずか1.2%、年間所得1,500万円以上でも3.3%のみである。市場調査の観点からは、超高額所得者の出現率の低さから、世帯年収1,500万円や2,000万円を便宜上、富裕層の最低ラインとみなすことも度々見られる。

■所得金額階級別にみた世帯数の相対度数分布(2009年)


出典:厚生労働省 平成21年国民生活基礎調査





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