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2010/05/03


定性調査の活用方法(1)〜マーケティングリサーチの調査手法〜

定性調査とは、特定製品・サービスの利用者や今後それを利用する可能性のある消費者などから生の声や反応を引き出し、マーケティング活動のにおける現状仮説を立てたり、新たなアイデアを見出すのに有効な調査手法です。 しかし一方で、市場全体のトレンドや消費者の傾向を把握しようとした場合、定性調査はあまり有効な方法ではありません。 この記事では定性調査の特徴や、定性調査のさまざまな調査手法など、定性調査を有効活用する方法を説明していきます。

まずマーケティングリサーチの調査手法は、調査対象として扱うデータにより、大きく「定性調査」「定量調査」「2次データ収集分析調査」の3つに分けることができます。 その中でも定性調査は特に1次データの定性データを扱います。 1次データとは、調査対象の生のデータや声であり、それに対して2次データとは既存の出版物や調査資料などからのデータを指します。 また、定性データとは言葉で表されたデータであり、一方定量データとは数字で表されたデータのことを指します。 例えば、「消費者は新製品がコンパクトで使いやすいから利用する」というデータは定性データであり、「新製品を好む消費者は80%である」というデータは定量データです。 このように定性調査から得られる結果は『直接の調査対象から聞いた、言葉で表されたデータ』ということになります。

マーケティングリサーチの調査手法
扱うデータ
定性調査 (質的調査)1次データ定性(質的)データ
定量調査 (量的調査)1次データ定量(量的)データ
2次データ収集分析調査(デスクリサーチ)2次データ(既存の出版物や調査資料などからのデータ)

「定性調査」「定量調査」「2次データ収集分析調査」は、手法の違いからそれぞれ異なる特徴を持っています。 定性調査は特に、調査の対象とする集団からごく少人数を抜き出して、一定の時間をかけて意見を聞いたり行動や反応を観察していく調査手法です。 そのため、2次データ収集分析調査や定量調査では得られない、現時点での調査対象者の意見や行動、及びそれらの深い背景までも比較的手軽に調べることが可能です。 ただし十分な数のサンプルを抜き出して調査をするわけではないので、集団全体の傾向を把握することには不向きです。 定性調査を用いる際には、その特性を十分把握した上で実施をする必要があります。

各調査手法の特徴
特徴費用期間
定性調査(質的調査)対話形式で少人数で行う調査であるため、調査対象の深い意識や行動、反応や行動の因果関係を把握することができるやや安いやや短期間
定量調査 (量的調査)多数の対象者に対して選択式などの単純な質問を行う調査であるため、調査対象全体の傾向を見ることができる高い長期間
2次データ収集分析調査(デスクリサーチ)調査目的にあったデータは限られるが、1次データ調査の前の事前調査として活用すると効果的である。安い短期間

定性調査の長所と短所
長所短所
  • 対象者の反応を見ながら質問内容の調整(追加・変更)が可能
  • 提示物や詳細説明を要する質問がしやすい
  • 対象者の実際の反応や態度を観察することができる
  • 回答内容の理由やその背景を深く聞くことができる
  • さまざまな事例を聞くことができる
  • 市場や特定の集団のごく一部の人々を抜き出して調査を行うため、集団全体の傾向や意識・行動を把握することには向いていない

定性調査のこのような特性により、マーケティング活動などの課題解決プロセスにおいて、定性調査は主にアイデア出しや仮説設定など、前半のプロセスで主に効果を発揮します。 下の表はI〜Vに課題解決プロセスの各ステップを表していますが、定性調査はステップIとVにおいて特に@〜Cの目的・役割を果たしています。 @〜Bが前半プロセスでの目的・役割を表しています。

課題解決プロセスで見る定性調査の目的・役割
課題解決
プロセス
定性調査の
目的・役割
説明
I. アイデア・仮説の開発@仮説の設定関係する人々の意識や行動を直接把握することで実際の市場やマーケティング活動に関わる仮説を構築します。
また、既にわかっているさまざまな事象の関係性を、定性情報を用いてつなぎ合わせることで、仮設の展開や補足をします。
消費者のグループインタビューからの生の声を聞いて、自社の商品が売れない理由をが商品の質にあるのか、プロモーションにあるのかなど仮説を立てる。
A新しいアイデアの開発新商品やサービスなどの開発において、潜在顧客の意見や反応から新たなアイデアやそれにつながるヒントを得ます。新製品のサンプルを消費者に見てもらい、意見を述べてもらうことで新たなアイデアを引き出したり、反応や態度を観察して改善点などのヒントを得る。
B事前情報の収集新たに調査の設計をする場合の事前情報を収集し、本調査で明らかにすべき内容や質問すべき内容などを明らかにします。アンケート調査を行う前に、グループインタビューを行い、対象者の意見や反応を分類して、アンケート調査の質問内容を決定する。
II. 実態の把握※ 定性調査は一部の意見や個別の事例を評価するものなので、全体の推論には適さない。 全体を評価するためには定量調査による検証必要である。
III. 結果の評価 / 仮説の検証C結果の簡易予測調査の対象者の意見や態度、反応を観察することで、事前に結果を予測します。 他の調査方法に比べて、短期間で結果が得られます。新製品や新サービスなどを事前に対象者に公開しその反応や態度を観察することで、市場に投入するかどうかを判断する。

次回は定性調査の手法など、より具体的な部分を説明していきます。

<続く>


» 定性調査の活用方法(2) ~さまざまな定性調査手法~

定性調査の活用法

» 市場調査(マーケティング・リサーチ)手法のライブラリ




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